#104 穴が開いていないのに凍みるのが知覚過敏

歯に直接関わる病気というのは、基本的に次の3種類になります。

①虫歯 :歯に穴が開いて、痛みなどの症状がでる。
②知覚過敏 :歯に穴が開いていないのに、凍みるなどの症状が出る。
③歯髄炎 :歯髄に炎症が起きて、痛みなどの症状が出る。

厳密に言うと、虫歯は咬耗症や酸蝕症などを含んでいますが、現在の歯科では虫歯としてほぼ同じ病変として治療されています。

歯周病は、文字通り歯の周囲の組織の病気です。直接歯に問題が有るわけではありません。
入れ歯やインプラントは、病気ではなく治療方法です。

無論、歯に関しては、形成不全とか、変色などの病変があります。
痛みなどの症状を伴う主要な病気となると、上記の3つになるわけです。

今回は、知覚過敏のお話です。

で、知覚過敏なのですが、病理学的に厳密に言うと病気ではありません。
病気というのは学術的には、原因と症状が明確になった病変のことです。

具体的に例を挙げると、インフルエンザは、インフルエンザウィルスに感染し、高熱、悪寒、咳などの諸症状を発生したものが、インフルエンザです。

この他にも症候群というものがあります。
こちらは原因が特定できないが、こういう症状があるという状態の病変のことをいいます。

知覚過敏は、この症候群の一つです。だから、知覚過敏症というのが、本来の名前です。

では知覚過敏がどういう病変かと言うと、上記したように
『歯に穴が開いていないのに、しみるなどの症状が出る』というものです。

虫歯の場合は、前章で触れたように、『歯に穴が開いて、痛みなどの症状がでる』病変です。
歯髄炎は、『歯髄に炎症が起きて、痛みなどの症状が出る』病変です。
こちらに関しては次回に触れる予定です。

では、どうして歯に穴も開いてなく、歯髄が炎症が起きていないのに、歯が凍みるという症状がでるかというと、『歯髄の知覚が過敏になって、本来なら感じない刺激を感知するから』です。

……そのまんまですね(^^;。


では、何故歯髄の知覚が過敏になるかについては、全く考えられておりません。
理由は、今まで述べてきたものと全く同じです。歯の痛みを計測できないからです。
痛みを計測し、客観的に記録できない以上、再現も不可能です。
だから、知覚過敏について研究のしようがありません。
『それでいいのか!』という突っ込みは、『至極ごもっともです』とお応えいたします。
ですが、歯科というのは、歯が何故痛いのかを研究する学問ではなく、歯が痛いのをどうにかするための方法の学問なのです。

勿論、何故歯が痛いのかを研究し、その上で痛みの理屈に沿って痛みを取り除いた方が安全で確実なのは間違いありません。しかし、何度も書くように痛みを客観的に記録する方法がありません。だから、知覚過敏の研究は、知覚過敏の症状を鎮める方法が確立した時点で終了しています。

それでも、現在考えられている知覚過敏の仕組を説明すると以下のようになります。

①歯の表面に、顕微鏡レベルでしか確認できない小さな亀裂ができる。
②この亀裂を通じて外部の刺激が歯髄に届くので、歯がしみるという症状が出る。

この説明を読んで脱力した方、友と呼ばせてください。

私が大学の講義で、最初にこの病変の説明を聞いたとき、『これって病名じゃなくて症状の名前じゃないのか』という疑問を捨てられませんでした。症候群はそういうものだというと、その通りなのですが、歯がしみるという症状だけで、病名にしてしまっていいのかと脱力感に襲われたものです。

一読してわかると思いますが、この説明ですと、前回お話した導水力学説の問題点と同じ点が説明できないのです。つまり、『何時歯が凍みるのかが説明できない』『小さな亀裂からの刺激で歯がしみるのか』という2点です。

何故歯髄が知覚過敏になり、本来なら凍みない刺激で歯が凍みるという症状が出るかが、説明がつかないのです。

ですが、治療法は確立しています。一般的な治療法は次の3つです。

①歯の表面に膜を張って、歯髄への刺激を遮断する。
②歯髄に電気刺激などを与え、歯髄の興奮を抑える。
③歯髄そのものを取り除く。

①と②は、健康保険でも認められている治療法です。
基本的に③は最後の手段で、よほど症状が治まらないと取られることはありません。

ともあれ、『原因はわからないけれど、対策はとれるからいいんじゃない』というのが、歯科の態度です。『対策はあっても、原因がわかったほうがよりよい解決策ができるんじゃないの』というのが私の主張であり、この文章のテーマです。

次は、歯髄炎についてお話したいと思います。


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